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2021年9月8日水曜日

『創造的破壊 グローバル文化経済学とコンテンツ産業』(タイラー・コーエン)

『創造的破壊 グローバル文化経済学とコンテンツ産業』(タイラー・コーエン)

『創造的破壊 グローバル文化経済学とコンテンツ産業』(タイラー・コーエン)を読んだ。

 考えさせる力が強い本です。グローバル経済は世界各地の文化的独自性を、現実に削いでいる。では、ハリウッド映画やショッピングモールは悪か。

 例えばパプアにモールができれば、パプアの独自性は失われ、美術コレクターの選択肢は狭まるでしょう。しかし、パプア人の選択肢を狭いままにしておけというのは正しくない。また、「社会集団間の多様性」が減っても、「社会内部の個人にとっての多様性」は増えうるし、そのほうが人々が自分に噛み合う文化を獲得しやすい。現に狭くても深い文化は増えている、という。

2021年2月22日月曜日

『カブーム! 100万人が熱狂したコミュニティ再生プロジェクト』(ダレル・ハモンド)

『カブーム! 100万人が熱狂したコミュニティ再生プロジェクト』(ダレル・ハモンド)

『カブーム! 100万人が熱狂したコミュニティ再生プロジェクト』(ダレル・ハモンド)を読んだ。

 面白い。アメリカの低所得地域には公園がないか、あっても危険です。そこにNPOカブーム!は2千以上の子ども公園を作り、その9割近くを持続させてきました。公共の難題を解決するには、工夫と情熱が両方必要だと、強く思ったことでした。

 工夫は「ビルド・デイ」。数百人のボランティアを集め、公園を1日で完成させるのです。これにより全ボランティアが「自分たちで作った」と思い、公園が、そしてコミュニティが、続いていくのです。そして情熱。著者の生い立ちも、立ち上げ期も発展も、とても力強いです。

2021年1月22日金曜日

『「きめ方」の論理 社会的決定理論への招待』(佐伯胖)

『「きめ方」の論理 社会的決定理論への招待』(佐伯胖)

『「きめ方」の論理 社会的決定理論への招待』(佐伯胖)を読んだ。

 著者はゲーム理論やパレート最適を丁寧に検討していきますが、どうもうまく現実を説明できません。そして気づくのでした。経済学は根本から間違ってると。

 経済学は丸ごと、人が自己利益の最大化を求めるという仮説の上に乗ってます。しかし実際、我々はさほど利己的ではありません。なのに利己心仮説が説明原理として普及すると、他人に利己心仮説を適用し、自分だけ取り残される恐怖が生じ、嫌々ながら利己的に選択してしまう。しかし利己心仮説が幻影ならば、そんなのは怯えて何でも怖がってるも同然なのです。

2020年11月24日火曜日

『操られる民主主義 デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか』(ジェイミー・バートレット)

『操られる民主主義 デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか』(ジェイミー・バートレット)


『操られる民主主義 デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか』(ジェイミー・バートレット)を読んだ。

 超面白い。2017年米国でロビー活動に最も金を出したのはどの会社? トランプのSNS選挙対策室でケンブリッジ・アナリティカ(個人情報を使う選挙コンサル)と協働したのはどの会社? 答えはGoogle。昔ならプロパガンダと呼ばれた手法をテックで洗練し、時価総額は50兆円を超え、もう既に、権力なのです。

 しかしテック企業は自分を権力側と思っていません。それは彼らの「カリフォルニアン・イデオロギー」。つまりテックの本質は人を解放すると信じているからです。そろそろ無理があるでしょう。

2020年9月12日土曜日

『「壁と卵」の現代中国論 リスク社会化する超大国とどう向き合うか』(梶谷懐)

『「壁と卵」の現代中国論 リスク社会化する超大国とどう向き合うか』(梶谷懐)

 『「壁と卵」の現代中国論 リスク社会化する超大国とどう向き合うか』(梶谷懐)を読んだ。

 昔、人の敵は自然でした。近代に至り、自然を克服したテクノロジーやシステムは、基本的には良いことのはずです。しかしテクノロジー等は、一部に害を与えることがあります。例えば公害や薬害です。このように人から生じるリスクの配分が問題となる社会(リスク社会)では、ある意味リスクを人が割り振るのですから、自由な異議申立と論議が重要です。

 ここで中国。中国はリスク社会に至っているのに、いまだに言論統制をしています。そのやり方、もうもたないでしょう。中国の深い認識が得られる本、お勧めです。

2020年9月9日水曜日

『多数決を疑う 社会的選択理論とは何か』(坂井豊貴)

『多数決を疑う 社会的選択理論とは何か』(坂井豊貴)

 『多数決を疑う 社会的選択理論とは何か』(坂井豊貴)を読んだ。

 面白い。2000年米国大統領選、当初世論調査ではゴア有利も、ラルフ・ネーダーが立候補してゴア票を喰い、ブッシュが当選しました。多数決は票の割れに弱い。また選択肢が複数だと、二番になりやすい穏当な主張よりも、嫌われても一番を目指す極端な主張が勝ちやすい。実際、欠陥制度ではないか。選択肢を順位づけして投票する(ボルダルール)なら、極端は敗れます。


 住民投票の工夫も出色。計画の実質確定後に住民意見を聞くセレモニーをするのでなく、しかも地域エゴや愉快票を避ける制度がありうるのです。

2020年5月21日木曜日

『ダーティ・シークレット タックス・ヘイブンが経済を破壊する』(リチャード・マーフィー)

『ダーティ・シークレット タックス・ヘイブンが経済を破壊する』(リチャード・マーフィー)

『ダーティ・シークレット タックス・ヘイブンが経済を破壊する』(リチャード・マーフィー)を読んだ。

 タックス・ヘイブンに関わる専門家は「全て合法に行っています」と言い、にわかに信じがたいわけですが、本書曰く、合法違法など実は大した問題ではない。秘密主義こそが問題なのです。

 経済学者はどんなに右寄りでも市場が働くには情報開示が必須としています。秘匿は市場を毀損し、経済を破壊します。

 法人にプライバシーなど大した問題ではない。法人は法人名義の財産の限度でしか責任を負わないのに、財産収支も隠すのは、責任と釣り合わず、信用の対象がなくなります。秘匿は信用を縮小し、経済を破壊します。