発表本は、次の4冊です。
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【1冊目】
『刑吏の社会史 中世ヨーロッパの庶民生活』(阿部謹也、中公新書)
なんと中世の前期には、刑罰という概念がありませんでした。また、刑吏もいませんでした。共同体の掟に反した者には、皆で石を投げて殺すなどしていたというのです。
なぜ歴史に刑吏が現れ、なぜ賤しまれることになったのか、その謎を解き明かそうとするものです。ロングセラーにふさわしく、面白いです。
帯は残虐推しですが、残虐はテーマではありません。でも残虐もちょっと載ってます。
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【2冊目】
『先生も知らない世界史』(玉木俊明、日経プレミアシリーズ)
古代から近代までの、交易史です。異文明間交易の重要性がわかります。
もともと豊かだったのはアジアで、ヨーロッパは後からなんですね。また、日本の銀が重要な役割を果たしたというのも面白かったです。
特に印象に残った主張は、「イギリスがヘゲモニーを握ったのは、偶然だ」というところ。いろいろ原因を言うことはできるけれども、全て後付けだと。ただ人々は、原因は偶然です、というのでは納得しない、というのです。
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【3冊目】
『動物裁判 西欧中世・正義のコスモス』(池上俊一、講談社現代新書)
ネズミに退去命令を出す。動物どころか、毛虫まで裁判にかけて、破門する。しかも毛虫は未成年者(幼虫だから!)とみなされて、保佐人と弁護士もつけられたと。驚きです。
ちなみに、記録に基づくと、破門の効果はほとんどいつもてきめんだったというのも面白いです。
なぜ動物を裁判にかけることになるのか。原因がいろいろ検討されているのですが、一説として擬人化説というのが印象に残りました。
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【4冊目】
『ロマネスクとは何か 石とぶどうの精神史』(酒井健、ちくま新書)
ヨーロッパは、ギリシャ・ローマ的な理性・明確性や、キリスト教的な統一性だけではありません。感覚的で、曖昧で、多元的なヨーロッパもある、ということが、本書を読むとよく分かります。ル・マンの大聖堂のねじれた柱など見事です。
厳格な修道士ベルナルドゥスは、クリュニー会の魚料理やワインを贅沢だと批判しますが、いかに美味しいのかを強調しすぎて、批判だかなんだか分からなくなるのが笑えます。
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この4冊で「読みたくなった本」に投票し、『刑吏の社会史』と『ロマネスクとは何か』の決選投票のすえ…、
チャンプ本は『刑吏の社会史』になりました。おめでとうございます!
ですので次回は、『刑吏の社会史』の読書会です。私は法制史にすごく興味があるので、楽しみです!
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料理の写真は、「ポルケッタ」。豚バラ肉を巻いて低温調理してからグリルしたもの。
ちょっと巻きが甘かったか。でもおいしい!
新書って、本当にいいものですね! ではまた。