2022年9月24日土曜日

第28回読書会 『わかったつもり』


晴れた土曜日の午前、読書会を開催しました。今回は『わかったつもり 読解力がつかない本当の原因』(西林克彦、光文社新書)を、みんなで読む回です。

 活発に意見が出ましたので、『わかったつもり』は、わかった! のか?

 □

Aさん
  •  161ページ 教科書に載っているファーブルの話、ファーブルが鳴いているものを捕まえたいと思ったことが、なんで「ファーブルは、ふしぎに思うことがあると、観察してたしかめずにいられなかったのである」ということになるん?と、初見から思った。みんな当然そう突っ込むと思ったので、むしろここは問題じゃないのだろうと、逆に引っかかってしまった。
  •  他の参加者の意見:Aさんは「ツッコミ力」が高いのではないか。

Bさん
  •  解釈するときは、どこまで自分の前提を持ち込めるかという問題がある。例えばファーブルの話では、ファーブルがコレクターだということを当然の前提において、「不思議」というのを、「はてな?と思うこと」と広く捉えると、むしろ教科書どおりの記述でもおかしくないと言えるかも。
  •  12ページ 猫の話(「もし もし お母さん」)は、小学生に教えるときには、同じように教えていて、効果的だと思う。
  •  国語の試験問題の話でいうと、全ての設問や全ての文章が良いものだ、ということはないので、わからなくてもいい問題があることは意識していいと思う。

Cさん
  •  吉本ばななの『TUGUMI』では女性主人公が男言葉で喋るが、そういうことによってもスキーマが混乱することがあると思う。
  •  136ページ「文章の構成そのものから、読み手がミスリードされやすい『わかったつもり』が存在する」の部分、なるほどと思った。自分もすごく誘導されてる自覚がある。
  •  私が表現者として表現するときは、説明のためのセリフは、できるだけ省きたいと思っている。考えさせたい。

Dさん
  •  81ページからの正倉院の文書 この文書は、プロパガンダ的な、歴史的な事実に反しない限りでできるだけ「正倉院すばらしい」にもっていこうという面があるのではないか。歴史上の天皇に対して敬語を使うし。これは決して私が引っかかったから言うのではない。
  •  本書は、誤読しやすいスキーマを色々挙げてくれているのは良いのだが、そのスキーマから抜け出す手段には欠けるきらいがある。
  •  抜け出す手段としては、外国語として読む、あるいは外国語の原典を読むという手がある。原書を単語まで分解して読む、大学の授業やゼミは、「わかったつもり」からの脱却としてやはり有意義だったと思う。

Eさん
  •  196ページからの大学入試センター試験についての章 解釈に正解はない、というのはそのとおりだと思う。本書では、解釈に正解はなくても不正解はあるというふうに話が進むが、不正解かどうかについても読み手によって違って解釈が違ってくるケースがあると思う。そういうことで生徒のやる気がなくなったりする場合もあり、それが読書離れや読解力の低下を生んでいるのではないか。

Fさん
  •  よく読むやり方をいろいろ書いてくれている部分については、同意できる。
  •  哲学書でいうと、哲学書を、自分の哲学的スキーマ(自分の問題意識)から読んでしまうという「わかったつもり」がよくある。これに対しては、大学で哲学教授から教わったのは、文法分析。主語述語・修飾被修飾から厳密に読むというやり方で、これはとてもお勧めです。
  •  ただ、本書の読み込む方向は、私とは違うなと。本書では、「整合性がとれる解釈が多く出ることがよいことだ」(194ページ等)というゴール。私は、「著者の意図が正確にわかる」というのがやはりゴールだと思う。
  •  他の参加者の意見1:うーん、法学では「立法者意思説」は少数説で、テキストは著者から独立して、テキストとして解釈し、解釈者に有用なように使うべきでは?
  •  他の参加者の意見2:(意見1に対して)いや、読書が有用なのは、自分の頭の中に仮想対話の相手方が作れること、パーソナルアドバイザーを作れること、といえると思う。そうすると、やはり著者の意図をつかむ、さらに著者の人格をつかむというのは重要では。

Gさん
  •  「わかったつもり」から脱するには、やはり体系や構造が重要だと思う。体系のない単発の知識だと、「『いろいろある」というわかったつもり」(140ページ、146ページ)になってしまう。
  •  体系や構造をつかむには、170ページの「読んだ文章について、意識的に自分なりの『まとめ』をしてみることを奨めます」というのは同意です。私も自分なりにやってるつもりです。

 □

 せっかく読むのですから、わかったつもりからは抜け出したい。一読後の「わかったつもり」を抜け出すのが困難で、ここを超えると、比較的少ない努力で、次々と気になるところを見出していける、とのこと。

 □

 さて今回の料理写真は、参加者の竹本祥乃監督から差し入れていただいた、手作りのゼリー!
 青空のようで美しい。そして重要なことを言いますが、とてもおいしいのです! 雲はクリームチーズと生クリーム。

 しかし今日の読書会も楽しかった。なにか独特の満足感が生じるのです。次回も楽しみにしてます!