自分の生活とコロナの関わりを思い返させます。参加者それぞれコロナとの関係が多様なため、いきおい、いろいろな意見が出て面白かったです。
参加者7名の意見は、以下のとおりです。
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Aさん
- 現象に名前をつけるのが上手い著者であると感じた。名前をつけることで、隠れていた現象を顕在化させることができる。これは、コロナによって隠れていた現象、目立たなかった格差が顕在化した事ともパラレルになっている。
Bさん
- 「2021年出生数予測では80万人を割り込むことが確実視されており」(32ページ)とあるが、実際の2021年の出生数は(速報値で)84万2897人。その他にも、他にもツッコミどころはある本だなと思った。
- 自宅に仕事を持ち込むのが嫌なので、リモートワークするぐらいなら有給休暇を取ったが、エッセンシャルワーカーの窮状(90ページ、113ページなど)を読むと、私は実は上流階級だったのかと思った。上流階級と思えないけど。
Cさん
- 目次のとおり様々な格差の問題があるけれども、これらは全て、お金の問題が解決すれば解決しそう。やっぱりベーシックインカムだと思った。
- 私は短大卒で、当時の高校生女子の間では全く珍しいことではなかった。勤務先には、地方の商業高校から集団就職のように関西に就職した人たちも結構いた。その後、勤務先では大卒・短卒・高卒に関わりなくきちんと働いているので、企業で格差が均されることもあると思う。
Dさん
- 自分の仕事での経験でも、N高(130ページ)などを読んでも、オンライン教育にはやっぱりメリットがあると思う。ただし課題は、生徒の理解度の把握が難しいこと。また、特に現状では個々のオンライン授業の質にバラツキがありそうなこと。あと、全体の底上げが可能なのかは分からない。しかし総合的には、オンラインなら通える子どもに授業ができることは大きいと思う。
Eさん
- 本書と問題意識が似ている、『大分断』(エマニュエル・トッド)が、とても面白かった。
- 家族消費からブランド消費を経て、アイデンティティー消費に至る(184ページ)というところ興味深い。やっぱり稼ぐならニッチだなと思っているし、まさにアイデンティティー消費のような、プライベート的な記録映画で対価をいただいたこともある。
Fさん
- 私は母親も働いてたし、自分の家族観がそれほど保守的だとは思っていなかったが、戦後型家族(男性が外で働き、女性が家を守って子どもを育てる)は、もう本当に終わりなんだなと思い知ってしみじみした。そこが一番おもしろかった。
Gさん
- 社会学者の仕事はまさに問題提起なのだなと思った。特に、対策を要する問題に名前をつけることの重要性を感じた。往年の名作コミック『パトレイバー』のセリフを思い出した。「ひとつだけ効能があるわ。黒いレイバーの存在感が心理的に実体化したこと。あれは得体の知れない妖怪なんかじゃなくて、グリフォンという名前を持ったレイバーだってことよ」
- インドのエドテック企業「バイジューズ」の紹介(163ページ)は、教育格差の解決への道筋を感じさせて興味深い。
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『新型格差社会』、読みやすく、間口が広く、読書会向けの本でした。実は読む前は、便乗的な速成新書なんじゃないかと心配していたのですが、杞憂でした。
コロナとの関係を通じて、自分の社会的な立ち位置もわかる、さすが社会学という新書と思います。
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料理の写真は、低温調理後に炙った豚バラ肉!
ではまた来月も、いい新書とともにお会いしましょう。