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『「退化」の進化学 ヒトにのこる進化の足跡』(犬塚則久、ブルーバックス)
進化論でいう「進化」には、良くなっていくという含意はありません。だから退化も進化だ!
人の器官は、進化というか退化の痕跡が残っています。耳の中には鮫の顎とか。私たちの身体は少なくとも4億年の進化と退化の果てにあるのです。
個人的には、副乳(通常の胸以外にできた乳頭や乳輪)の話に、本日の読書会を副乳で塗りつぶすほどのインパクトがありました。
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『進化のからくり 現代のダーウィンたちの物語』(千葉聡、ブルーバックス)
進化論研究者の列伝の趣きもあるエッセイ。とても理系研究者の文章と思えないほど軽妙とか。
カタツムリは首もと?にある生殖器官で交尾しますが、たまたま左巻きのカタツムリが生まれてしまうと、交尾の具合が悪く、お相手探しにとても苦労する、という話とか。この章の章題は「聖なる皇帝」。内臓が左右反転しているサウザー(北斗の拳。「退かぬ!媚びぬ!省みぬ!帝王に逃走はないのだー!」の人)から、なんとカタツムリにつながるのです。
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『なぜヒトは学ぶのか 教育を生物学的に考える』(安藤寿康、講談社現代新書)
事実として、学業成績には遺伝の影響が大きい。行動遺伝学のエビデンスによれば、遺伝の影響は50%、家庭環境の影響が30%、本人や先生で変えられる要因の影響は20%にすぎないとか。
「生まれつき」が完全にタブーになっている教育学の世界ですが、実際にはみんな薄々わかっているので、よくない状況です。本書はタブー破り万歳みたいなところが一切ない、とても誠実なもの。それこそ遺伝子からして一人一人違う我々にとって、教育とは何かを示してくれます。
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さてこの3冊、どれも面白そうですが、みなさまがたは、どの本をいちばん読みたくなりましたでしょうか?
では、チャンプ本の発表です! チャンプ本は…、
『「退化」の進化学 ヒトにのこる進化の足跡』(犬塚則久、ブルーバックス)
おめでとうございます!
来月は、『「退化」の進化学』を課題本とする読書会です。
ではまた、いい新書とともに、お会いしましょう。