読書会、「マンガを深く読むための新書」を開催しました! 今回はサマー・スペシャル、ビブリオバトルが2回です。まずマンガのビブリオバトルをして、次に「マンガを深く読むための新書」のビブリオバトルをする。
目論見としては、チャンプ本となったマンガを、チャンプ本となった新書の知見で読み解くと、より深く読める、読めるぞ! みたいなものを期待しているのですが、はたしてこの目論見、というか皮算用のようなものどおりに、行くのかどうか! ドキドキです!(私が)
まずはマンガのビブリオバトルです。
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【Aさん】
『隊長と私』(クリハラ タカシ)
すごい不思議な世界で、夢のようなというか、読んでいると癒されるというか。いや違うな、言葉にしにくいんですけど、心の中で何かが解消指していくような…。というかこうやって説明するのももどかしいんで、読んでみてください! 私はこの本を手に取ったが最後、いつも終わりまで読み返してしまうんです。
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【Bさん】
『Dr.STONE reboot:百夜』(原作:稲垣理一郎、マンガ:Boichi)
けなげなロボットって、いいですよね。すごく。わたしはここにいます。戻ってきてくれますか、みたいな。わたしはまもなく機能停止します、みたいな。もう泣きポイントがいっぱいです。
物語世界も素晴らしい。大気圏突入してしまわないための燃料の獲得方法など、物理学的な緻密さも、読みどころです。
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【Cさん】
『大奥』(よしなが ふみ)
江戸時代のパラレルワールドで、男女が逆転した世界の物語です。逆転なので、男性が大奥にいます。この設定を聞いただけだと、逆ハーレムが描きたかったのかと思うかもしれませんが、全く違います。社会的なリアリティがすごいんです。逆転したので女性が幸せだという単純なことでもなくて。人物の造形も、驚くほど秀逸です。これはぜひ、皆さんに読んでもらいたいです。
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【Dさん】
『これ描いて死ね』(とよ田みのる)
「マンガ家マンガにハズレなし」という格言があるんですが、まさにそれ。東京都の島しょ・伊豆王島に住む、マンガを描き始める女子高生の話です。
仲間を増やしていくという王道の展開ですが、マンガ部の面々のキャラクターがすごく良くできてまして、風呂敷というか世界観を拡げていくタイプの主人公と、絵が上手くて物語をきっちりまとめようとする友人、また、マンガを読むばっかりの友人とか。実にいいマンガです。
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【Eさん】
『絶対安全剃刀 高野文子作品集』(高野文子)
高野文子さんって、今は、独特の落ち着いた画風が確立されて、高い評価も確立されているように思いますが、本書は初期の短編集で、一作一作画風が違いますし、かなり実験的な作品もあります。葬儀の場面を、定型的なコマ割りを連続させて描くとか。
私が最も好きな作品は、「田辺のつる」。子どもとして描かれてるのが、実は高齢の認知症のおばあさんという。主人公としてのリアリティと、他の多くの人たちから見た状況とのズレを描くというのが、高野文子さんの面白さではないかなと思います。
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【Fさん】
『銃夢』(木城ゆきと)
やっぱり、マンガって世界観というか、空気感ですよね。私の子どもの頃の現実で初めて経験した異世界、競輪場から受けた印象が、『銃夢』の「モーターボール」に似てるんです。その場末感と、サーキット特有のオイルの匂いまでしてくるような、リアリティが。いつまでもその世界に浸っていたい。
ただこのマンガがすごいのは、世界観に淫するようなのではなくて、そこを超えようという意思が感じられるところなんです。
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【Gさん】
『暗殺教室』(松井優征)
素晴らしくよくできてるんです。松井優征さんって、計算しきって描いてるんです。連載を始めた時点で既に、最後までの構成を作っていた。しかも、人気が出なくて早めに終わってしまうことに備えたパターンまで考えていたという。でも、元々『ボボボーボ・ボーボボ』(少年ジャンプ伝説のギャグマンガ)のアシスタントもやっておられて、ハジケるところでハジケることもできる。この人気の秘密、つまりマンガづくりの理論を、皆で味わってみたいです。
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ではマンガのチャンプ本投票です。めっちゃ迷う。そして、『Dr.STONE reboot:百夜』と『これ描いて死ね』との決選投票となり…、チャンプ本は『Dr.STONE reboot:百夜』となりました! ワーワー!
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続きましてさっそく、「マンガを深く読むための新書」ビブリオバトルです!
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【Aさん】
『老いと創造 朦朧人生相談』(横尾忠則、講談社現代新書)
本書は、人生相談に横尾さんが答えたもので、全ての相談に、最後には「好きなようにしてください」と返すその言葉も面白いですが、それぞれの答えに、横尾忠則現代美術館のキュレーターが、絵をつけているのがいいんです。
本は言葉だけですが、マンガはビジュアルと言葉ですよね。言葉で伝わらないものとあると思うんです。ビジュアルで、何かの答えを感じてもらうようなことが、あると思う。それを本書で感じました。
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【Bさん】
『宇宙はどこまで行けるか ロケットエンジンの実力と未来』(小泉宏之、中公新書)
『Dr.STONE reboot:百夜』をチャンプ本に選んでいただきましたので、このマンガをより深く読むために、この新書を。最新の宇宙論が分かれば、『白夜』をより深く読めます! マンガでレイが燃料を獲得するために、なぜすぐ近くの地表(地球)に降りずに、わざわざ彗星まで行くのか。ロケット方程式が分かれば、そりゃそうだよなと、分かるんです。
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【Cさん】
『性差(ジェンダー)の日本史』(「性差の日本史」展示プロジェクト、インターナショナル新書)
国立歴史民俗博物館が監修した、「性差(ジェンダー)の日本史」展の見所を解説した新書です。史料から語るものです。
これを読むと、明治以前のほうが、男女の区分けは少なかったのではと思いますね。例えば采女(うねめ。天皇や皇后に近侍した女官)は、今でいうバリキャリで、能力で選ばれていました。その他、古代では女性も自分の財産を所有していた等々です。
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【Gさん】
『ひらめき教室 「弱者」のための仕事論』(松井優征、佐藤オオキ、集英社新書)
「弱者」ってありますが、松井優征さんって、たとえばめちゃくちゃ絵が上手いとか、ワンピースみたいな勢いと壮大さが描けるとか、そういった天才ではないと思うんです。自分でそう言っていて、だから「どう見せるか」に全振りしていると。
だからこそ、どう創りあげるかというのが、とても説得的なんですね。実際にありうるリアリティと、マンガ的盛り上げを、いかに両立させるかとか。マンガを知るにはすごくいい新書だと思います。
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【Dさん】
『構図がわかれば絵画がわかる』(布施英利、光文社新書)
マンガでの構図の重要性って、言うまでもないくらいですよね。マンガを読み込むときに、構図の面から読んでみると、また新しい発見があると思うんです。
例えば、私が発表した『これ描いて死ね』のこのシーンでは、立った登場人物と座った登場人物を描いて、構図は底辺が広い三角形で、印象的なセリフがバーンと上に掲げられている。やっぱり印象的ですよね。
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【Fさん】
『荒木飛呂彦の漫画術』(荒木飛呂彦、集英社新書)
荒木飛呂彦曰く、「主人公は常にプラス」。主人公を常にプラスにするのはけっこう辛い作業のようで、いったんは主人公を挫折させようかという「誘惑」に駆られることもあるらしいんですが、それはダメだと。マンガは辛いこともある人生を表現するものではない。常にプラスの気持ちを与えるものなんだという、強い倫理感のようなものが印象的です。
『岸辺露伴は動かない』の「富豪村」をどのように描いたかの解説も面白いですし、マンガを知るのにいい新書です。
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【Eさん】
『アイロニーはなぜ伝わるのか?』(木原善彦、光文社新書)
先ほどのチャンプ本『Dr.STONE reboot:百夜』のレイの、「戻ってきてくれますか」をけなげに感じるのは、戻って来れないからですよね。これは本書で言う「劇的アイロニー」なのかもしれない。
アイロニーっていうのは様々で、単に逆のことを示すだけではありません。ただそうなると、より一層、なぜ伝わるのか不思議ですよね。
本書では「メンタル・スペース構造」などの理論で、アイロニーの伝わり方を解明しようとするものです。後半は古典作品などを題材とした実践解説です。マンガは例になっていませんが、マンガを対象にやってみるのも面白いはずです。
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では新書のほうの投票です。こちらは『宇宙はどこまで行けるか』と『アイロニーはなぜ伝わるのか?』の決選投票となり…、『アイロニーはなぜ伝わるのか?』がチャンプ本に選ばれました!
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ですので次回は、『アイロニーはなぜ伝わるのか?』の知見をもって、『Dr.STONE reboot:百夜』を読み解こうではないかと!
現在明らかになっているだけでも、『Dr.STONE reboot:百夜』ではアイロニーが使われているようなので。楽しみです!













