2024年7月7日日曜日

第41回読書会 ビブリオバトル・テーマ「大戦期ドイツ」

 

新書読書会「連鎖堂」、ビブリオバトルをおこないました! テーマは「大戦期ドイツ」です。今こそあの時代を考えたい。

次の7冊が紹介されました。


【1冊目】

『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』(大木毅、岩波新書)

 独ソ戦は、双方のプロパガンダのために事実が表に出ず、まだしも分かりはじめたのはソ連が崩壊してから。しかし我々は今も、プロパガンダ時代の言説や、個人の戦争体験の物語に影響されています。本書で事実を知ることができる。全ての記述が印象的ですが、やはり悲惨さがすごく響きます。

 さらに、読んでいてぞくぞくしたのですが、歴史なのに、まさに今とオーバーラップするんです。というのも、独ソ戦の主な戦場がウクライナだからです。本書の刊行は2019年でウクライナ侵攻より前ですが、書かれる地名や、やっていることが、ウクライナ侵攻にかぶるのです。今こそ読みましょう。


【2冊目】

『悪と全体主義 ハンナ・アーレントから考える』(仲正昌樹、NHK出版新書)

 全体主義というのは、「大衆の願い」を政策にしたもの。この大衆の願いというのは、安心させてくれる、わかりやすい物語です。そして本書によれば、わかりやすさには危険がある。わかりにくさに耐える必要があるというのです。

 本書はNHK100分de名著をもとにしたもので、あの分厚い(3冊合計1300ページ!)の『全体主義の起原』をコンパクトにまとめてくれています。お得です。ただ少し背反するんじゃないかと感じるのが、わかりにくさに耐えろといいながら、本書はとてもわかりやすいんですね。やっぱり『全体主義の起原』を読まないとな、と思いました。


【3冊目】

『ヒトラー 虚像の独裁者』(芝健介、岩波新書)

 ヒトラーのせいだ、ヒトラーの責任だというのとはわかりやすいストーリーですが、本当にそれだけか。というのも、ヒトラーが大衆とともにあった、大衆がヒトラーを支持したという事実はあったからです。しかも私が思っていたよりも、その期間が長かった。敗戦が現実化してくるまで、支持があったようです。

 もちろん本書にはヒトラーの妄想や、ヒトラーだったからこその悪という面も書かれてはいますが、私は違う視点も得られたと思いました。


【4冊目】

『ヒトラーの時代 ドイツ国民はなぜ独裁者に熱狂したのか』(池内紀、中公新書)

 ドイツの一般人のなかには今も、ヒトラー統治時代を懐かしむ層が根強くいるという報道に接し、手に取ったのが本書です。

 ヒトラーが大衆に支持された背景として多額の賠償金、むごいインフレなど将来が展望できないような経済状況があった。そんな中で、ヒトラーの小気味の良い、二者択一を迫っていくようなスピーチが大衆には人気があった。
 ヒトラーは政権を握ってから当初の4年間は効果的な政策を連発し、仮にそこで他界していたらドイツ憲政史上もっとも有能政治家であったという評価が紹介されていた。ヒトラーが行った政策の中では、歓喜力行団(かんきりきこうだん)という、労働者に対して安価で質の良い旅行を提供するというものが、ナチス支持にもっとも大きなインパクトを与えたようだ。


【5冊目】

『ナチスと隕石仏像 SSチベット探検隊とアーリア神話』(浜本隆志、集英社新書ノンフィクション)

 皆さんヒトラーですが、私はヒムラーで。親衛隊隊長ヒムラーがチベットへ探検隊を派遣して発見したという、仏像(表紙の写真)から始まる謎についての本です。

 ハーケンクロイツがしるされた仏像は、どうやら本当に隕石からできているようですが、これはいったいどういうものか? アーリア神話のルーツを示すのか? 仏像なのにズボンを穿いている? ルーン文字? 研究機関アーネンエルベ? というか、第二次世界大戦開戦1年前にチベット探検してる場合か?

 ヒムラーは農学部の出身で、家畜のように人間を育種する構想まで持っていたというのです。ナチスのオカルト的側面がわかって、とても面白いです。


【6冊目】

『1918年最強ドイツ軍はなぜ敗れたのか ドイツ・システムの強さと脆さ』(飯倉章、文春新書)

 ドイツの特徴は、その容赦のなさ。長子相続に由来する権威主義が、軍隊の運用に向いていて、強いです。日本も長子相続で権威主義がありますが、和を以て貴しとなすという面もあります。ドイツには和はありません。欲望も剥き出しです。

 そうすると弱点は、まず作戦を共有しない。それから、弱いはずものが服従してこないと、ショックを受けて気を病んでしまう。そしてだんだん内側から崩壊してしまうというのです。とても説得的と思いました。


【7冊目】

『ヒトラーとナチ・ドイツ』(石田勇治、講談社現代新書)

 ヒトラー政権当時を追体験できるような、臨場感ある新書です。自分が当時ドイツに住んでいたとして、ヒトラーの台頭を防げたのか、と考えるんですが、実際、無理だったろうなと。

 ヒトラーの、最初は暴力で勢力拡張し、政権を取ったら専門職や経済エリートも取り込むという手並みが、防ぎにくい。逆にいうと、ボランティアで散々使われた挙げ句に、政権を取ったら秩序維持のために粛清(レーム事件)されたSA(突撃隊)の無惨さが印象的です。


 以上7冊、なんか物凄いラインナップですが、投票の結果…、

 『独ソ戦』がチャンプ本、イコール次回読書会の課題本になりました。おめでとうございます! 新書大賞受賞の新書の実力はいかに? 次回乞うご期待!
 あと個人的には、ちょっと変化球の『ナチスと隕石仏像』が気になる。


 料理のほうは、新作のエリンギガーリックバターが好評でした。

 いい新書が集まる…。自会自賛ですが、うーん、いいですね。また来月!


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2024年5月4日土曜日

第40回読書会 『ルールはそもそもなんのためにあるのか』

『ルールはそもそもなんのためにあるのか』(住吉雅美、ちくまプリマー新書)

『ルールはそもそもなんのためにあるのか』(住吉雅美、ちくまプリマー新書)の読書会を行いました! 初めての方にも参加いただき、嬉しかったです。

 課題本は法哲学というハードル高めの分野。でもちくまプリマー新書で読みやすいので貴重です。私は弁護士ですが、普段の業務(欠陥住宅訴訟が多い)では事実認定に注力するので、法哲学なんか考えないぞ! なのでこの本は新鮮で(笑)、すごく面白かったです。

 ルールについては喋りたくなるので、読書会も盛り上がりました。以下、参加者の意見です。

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【Aさん】

○ 著者は、リーグ戦の次戦の日程を有利にするために引き分け狙いの試合運びをすることを、フェアプレーのルールから批判してます(50-54頁)。でも、スポーツというのは、戦略も競うものでは? 私はこれがルール違反だとは感じないです。

○ エスカレーターの左側開けルールがなかなか変わらないって書いてあります(第6章)が、アイデアがあります! エスカレーターの一段一段の段差をすごく高くすれば(スキー場のリフトみたいな感じ。ステップの広さは車いすやベビーカーが乗れるくらい広くすると便利)、歩けなくなって一発で解決。システムのほうを変えて対応するっていう手があります。

Bさん そうすると、非常時に通れなくなっちゃいません?

○ じゃあ、簡単には上り下りできないけれど頑張れば上り下りできるぐらいの高さで! あと、横に階段を設置するのは必須ね(急ぐ人は階段使えルール)。

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【Bさん】

○ 反婚の考え(法的制度としての結婚そのものが不要。第4章)が、最も興味深いです。特定の結婚の仕方を法的に承認する制度があるから、どういう形態でないとダメとかイイとかいう問題になる。でも、結婚の制度がなければ、そもそもそういう不毛な話にならない。
 これはベーシックインカムにも通ずる話で、一律に給付すれば、給付のための基準は問題にならない。
 基準がなくてもやっていけるほど十分な資源があるなら、基準はいらないと思います。

○ アナーキズムであっても生じる秩序っていうのも、興味深い。ロールズの「二つのルール概念」論文で提示された「実践的見方」を援用している論述(56頁)とか。

 ただここで、この本にはけっこう大きな間違いがあって、参考文献に挙げられてるロールズの本は1冊、『公正としての正義 再説』(岩波現代文庫)だけです。でも「二つのルール概念」論文が収められているのは『公正としての正義』(木鐸社)であって、『再説』のほうは、主著『正義論』への批判に回答する内容の全く別の本です。こういうことをやられると、ロールズをちゃんと検討してるのかなと思ってしまって、信頼性が落ちるなあ。

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【Cさん】

○ 大学で、民俗学をとったんですけど、担任の先生は折口信夫先生の弟子のひとでした。
 担任の先生経由で折口信夫先生の調査を聞いたんですが、明治の終わりころだと、祭りの後などに乱交の風俗があって、父親が分からないということもよくあったとか。でも子どもは育っていく。父母だけで育てるというのではなくて、もう少し広いコミュニティで子育てするというのもありうることだなと思います。

○ 殺し屋に追われた親友が自分の家に逃げ込んできて、殺し屋から「逃げ込んできてないか」と問われたときに、それでもカントは、嘘をつくべきでないというんですね(44-47頁)。
 こういう状況になった時にどちらを取っても後悔するような気がして選択が難しいけれど、カントのような考え方もあるんだと思いました。

 Bさん その設例はカント研究者の間でもとても問題になっていて、嘘はつけないんですが、殺し屋と戦うというのは普遍ルールからアリですし、また、答えないというのも普遍ルールからアリっていうことのようですね。

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【Dさん】

○ 公共性と普遍性(41頁)について、ルールが示す価値観とは異なる価値観を持つ人に対しても、そのルールを守りなさいと言える根拠はなんだろう、というのが、最も考えさせられたところでした。多数決でルールを作るとすれば、全員の価値観に合致するルールを作ることは難しい。そうすると、価値観に関わるルールは最小限にしたほうがいいのかな、と思いました。

○ 法律家としては、価値観は時代と共に変化していくものなので、ハーバート・ハートが第2次的ルールとして「変更のルール」を挙げているのが興味深かった。(32頁)

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【Eさん】

○ 自然発生するルールという考え方が、とても面白かったです。ただ、ルールの設定者に都合のいいルールが成立するということは、やっぱりあるように思って、ジレンマを感じます。

○ また、ルールは普遍的であるべきとあって、私もそう思っていたんですが、状況が変わるとルールが変わる事例があるというのにも、なるほどと思いました。例えば「津波てんでんこ」では、弱いものを助けるというルールが避難を遅らせて被害を拡大するので、各自が高台を目指すというルールが成立しているとか(25-26頁)。

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【Fさん】

○ 著者のようにアナーキズムに立っても、合理的・功利主義的でないルールもあり得るというのが、最も面白かったです。サッカーで、弱いほうは手を使ってもいいというんでは、サッカーというゲーム自体が成り立たない。ゲームを成り立たせるためのルール(56-58頁)という視点を得ました。

○ 著者は、道徳とルールを混ぜるのが嫌いみたいで、私も嫌いなんですが、でも実務法曹としては、こんなことは許せん!という、道徳とルールを混ぜてるような人々こそが、ルールを支えている側面は否定できないと思うんです。

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【Gさん】

○ 長く生きていると、ルールがゆるやかに変化していくのを見ることができます。エスカレーターができてルールがなかったころから、左側開けのルールに変化して、それから歩かないルールへ、もうすぐ変化するのかな。電車の整列乗車だって、昔の大阪では誰もやってなかったんですよ。

○ この本全体の感想として、答えを明確にしないというか、踏み込みが浅いというか、ツッコミどころが多い。でもそういう本がむしろ読書会には向くんだな、というのを強く感じました。

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 議論百出で面白かった! 今日の料理は低温オーブン(100℃90分)で焼いた豚バラ、あとチキントマトクリームスープ。ではまた来月!


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2024年2月4日日曜日

第39回読書会 ビブリオバトル全国大会予選+エキシビション・マッチ「笑える本」


ビブリオバトル全国大会inいこまの予選 +エキシビション・マッチ「笑える本」を行いました。さすが全国への予選、渾身の一冊が紹介され、大接戦となりました!

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 しかし今回思ったんですが、連鎖堂のビブリオバトルでは、質問がたくさん出るのが嬉しいですね。

 私はなぜか質問がいくらでも出てくるので、また、どんな場所でも喋れるので、会場によっては私ばっかり質問しているみたいになることもあります。でも連鎖堂でのビブリオバトルでは、私が質問できないくらい、たくさん質問が出るのです。

 これはなぜかと尋ねれば、会場(キッチンスペース)の親密感というか、狭いけど賑わってるスナックみたいな密集感がいいのかもしれません。本日の参加者は10名でしたが、10名だと本当に満員です。

 私は、図書館の入口近くなど、オープンスペースで行うビブリオバトルも好きなんですが、本に集中するならやっぱりクローズドなのかもしれない。

 さて本題、紹介された本は以下のとおりです。

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【1冊目】
『親ガチャの哲学』(戸谷洋志、新潮新書)

 親ガチャという言葉は、絶望を呼ぶのではないか。親ガチャに外れたから、もうだめだという。

 そんな消極に対してハイデガーばりに主体的決断を強調すると、こちらは自己責任論を呼んでしまう。

 著者によれば、ソーシャルミニマム(最低限の生活)の保障が重要だというのですが、なかでも対話の場へのアクセスの保障を重視するところが、哲学カフェやビブリオバトルの実践者である著者らしい視点でした。

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【2冊目】
『ルールはそもそもなんのためにあるのか』(住吉雅美、ちくまプリマー新書)

 連鎖堂にふさわしく、意見百出で議論が盛り上がりそうな新書を持ってきました。

 男性が家で小用を足すとき、便座に座らなければならないでしょうか。
 エレベーターでは左側(大阪)を開けなければならないでしょうか。
 マスクはしなければならないでしょうか。

 ルールには、一方では強制する力が必要なようです。しかし他方ではナッシュ均衡により自然に収束していく面もあるようです。

 著者は還暦過ぎの女性の法哲学者ですが、隙あらばガンダムや刃牙の話題をブッ込んでくるところも読みどころです。

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【3冊目】
『怪談の心理学 学校に生まれる怖い話』(中村希明、講談社現代新書)

 怪談を心理学から研究するのが珍しい。怪談の広がり方の調査が面白いです。例えば、流言の広がる速度の速さ。戦前でも、札幌から東京まで1日で伝播したとか。

 怪談は広がると変形しますが、尾ヒレがつくというよりも、核心部分が強調されたり意味づけされたりするようです。覚えやすく、興味を引くように語れるほうが広がるためです。
 人は意味を求めてしまう。実験によれば、意味のない図でも、人が写しとっていくたびに意味が加わってしまい、最後にはフクロウになったりするのです。

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【4冊目】
『鳥獣戯画の世界』(上野憲示監修、宝島社新書)

 「へーっ」と何度も言ってしまうこと請けあいの新書です。

 あのウサギとカエルだけが鳥獣戯画ではないですよ。そもそも甲乙丙丁と続いていて、もっとリアルな鳥獣も描かれています。
 作者の謎も面白いです。宮廷絵師系統なのか、仏師系統(特に密教系)なのか。その謎に、歴史や、絵のタッチからも迫ります。

 日本の漫画の原型とも言われる鳥獣戯画を堪能できるようになる新書、とてもおすすめです。

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【5冊目】
『宮部みゆきが「本よみうり堂」でおすすめした本』(宮部みゆき、中公新書ラクレ)

 ビブリオバトルに参加する前には、新聞の日曜日の書評欄を楽しみにしていました。特に宮部みゆきさんの書評を。印象に残ってる本は、絵本の『ゾンビで学ぶAtoZ』とか。

 ミステリへの書評だけでなく幅はとんでもなく広いです。彼女の平場の文章がいかに分かりやすいか、核心を衝いているか、味わってほしい。ビブリオバトルでの紹介の仕方の参考にもなると思います。

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 さて投票です。今回は特に素晴らしい新書が揃い、選ぶのにとても迷いました。皆様そうだったようで、大接戦にもつれ込み…、今月のチャンプ本、イコール全国大会へのチャンプ本は…、『そもそもルールはなんのためにあるのか』に決定しました! ワーワー! おめでとうございます!

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【エキシビションマッチ!】

 続きまして、エキシビションマッチ。テーマは年末年始に向けて、「笑える本」です。こちらの紹介はコンパクトに。

【1冊目】
『まるで本当のような嘘の話』(トキオ・ナレッジ、ワニブックスPLUS新書)
 ぐっすりの語源はグッドスリープ。嘘。

【2冊目】
『思わず考えちゃう』(ヨシタケシンスケ)
 あの人に、どうにかして後悔してもらいたい。

【3冊目】
『ロスねこ日記』(北大路公子)
 ネコがいなくなって寂しいなら、シイタケを愛でればいいんじゃないですか。

【4冊目】
『世界のマネージョーク集』(早坂隆、中公新書ラクレ)
 トムはジョージから100ドル借りたが、返すお金がない。そこでジョージに返済するため、マイクから100ドル借りた。マイクへ返済する期日が来たが、トムはやっぱりお金がない。そこでマイクへ返済するため、ジョージから100ドル借りた。ジョージへの返済期日には、またマイクから借りた。これを何度か繰り返した後、トムはジョージとマイクに言った。「もう面倒なので、あとはジョージとマイクでやり取りしてくれないか」 HAHAHA!

 チャンプ本は『世界のマネージョーク集』! HAHAHA!

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 今回の料理は、新作のサバトマトチーズスープなど! おいしいと言っていただけて嬉しかったです。

 いやー、今回の新書は素晴らしかった。終わった後この文章を書いているときも幸せを感じるほどです。ではまた! 


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2023年12月17日日曜日

第38回読書会 『構図がわかれば絵画がわかる』


 読書会と美術館観覧を、合体! 「構図がわかれば浮世絵が分かる」を開催しました。土曜の午前から、『構図がわかれば絵画がわかる』(布施英利、光文社新書)の読書会を行い、そのあと大阪浮世絵美術館に皆で行って観覧、という試みです。

 結果、すごく楽しかったです!

 読書会には、課題本のほか、お気に入りの画集もお持ちいただきました。これも大当たりで、お気に入りの画集を持ちよって見せ合うと楽しい、ということが分かりました。
 構図がわかると、絵が違って見える。お気に入りの絵もさらに深く鑑賞できるようになるのです。

 以下、読書会で出た意見です。ページ数は『構図がわかれば絵画がわかる』のページです。

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【Aさん】

 永井豪が描く、大量の悪魔が復活する場面は、逆さにした《紅白梅図屏風》にそっくり。逆三角の曲線で。この逆三角形(54頁)は、ムンクの《叫び》と同じ効果ですよ。悪魔復活の不安感がすごいと思ったら、そういう秘密があったとは。

『画業50周年突破記念 永井GO展 展覧会図録』掲載

《紅白梅図屏風》

《叫び》

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【Bさん】

 光文社新書のこの表紙、「三角形」(50頁)が絶妙です。で、思考実験としてこの「白黒」(184頁)を反転してみると、おそらく黒が下側だと安定しすぎるんじゃないか。
 また、アランちゃんの位置も絶妙で、上から3分の1程度の、この「点」(11頁)にいるしかない。白い部分とか、もっと上にいたら、締まらないと思います。
 加えて、アランちゃん後ろにある影、地平線も絶妙。こんなに小さいのに「水平」(38頁)を感じさせます。

 構図に気をつけて改めて見ると、装幀のアラン・チャン(香港のデザイナー)、さすがと思いました。


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【Cさん】

 パオロ・ウッチェロ(ルネサンス初期イタリアの画家)が好きで、本書で紹介されている《森の狩人》も素晴らしい。


 私が特に好きな、ウッチェロ《聖ゲオルギウスと竜》にはバージョンが2つあります。



 私は上の絵がいいと思うんですが、この絵でポイントとなる槍が、上の絵では「対角線」(41頁)になってます。これが効いてるんじゃないか。下の絵は上の絵よりも、全体にちょっとボヤけた感じを受けます。

 同じ画家の同じテーマの絵なのに、構図でやっぱり違いますね。

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【Dさん】

 切り絵作家の藤城清治さんが好きで、展覧会にもよく行ってます。以前、展覧会のアンケートに答えたら、事務局から「藤城さんがアンケートのお答えに喜んでいます」というお手紙とカードが届いて、とても嬉しかったです。

 特に好きな《アリスのハート》は、切り絵で生まれる光と影で遠近感が出ていると思います。真ん中のハートや木の形は「逆三角形」(52頁)の技術が使われていて、緑とオレンジなど補色の技術も発見できました。


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【Eさん】

 一つの絵の中で「時間」の経過を表す技法が、西洋にもあります(126頁)が、日本の絵巻には、まさに時間が描かれます。

 国宝《信貴山縁起絵巻》は通常の絵巻同様、時間は右から左へ進むんですが、「剣の護法」という童子の登場シーンから次の行動シーンは左から右へのコマ割りで展開されます。このように時間の流れが交錯するため、童子の存在はとてもインパクトがあるんです。


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【Fさん】

 山口晃の画集を持ってきました。この、絵巻物みたいな絵が大好きなんです。

 山口晃の絵は細部こそが主役という感じなんですが、『構図がわかれば絵画がわかる』を読んで、全体の構図も素晴らしいと気づきました。
 《大阪市電百珍圖》では逆三角形の構図(52頁)が大阪市を浮遊させるような効果を生んでいると思いますし、《當世おばか合戦》では円の構図(76頁)が永遠を顕しているのでは。

《大阪市電百珍圖》(ウェブ上に全体図はアップされていないようです)

《當卋おばか合戦》


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【Gさん】

 佐伯祐三が好きです。

 《下落合風景》に描かれた電柱、真ん中の一番高いものは「垂直」(19頁)ですが、その他の電柱は中央に向かってやや傾いています。《パリ雪景》の家屋も中央へ傾いてる。これはあえて垂直を外すことで、奥行き感を出そうとしたんでしょうか。



 本では、セザンヌ《セント・ヴィクトワール山とアーク川渓谷の橋》について、画面の左右での「複数の視点」が指摘されてます(113頁)。
 佐伯祐三《勝浦風景》は、画面の上から下へに、「複数の視点」があると思いました。絵の下のほうには崖から見下ろした船が描かれ、絵の上のほうは遠くを見た波や水平線が描かれているのに、絵の全体としては一体感があります。まさに海岸に立って海を見ているようで、凄いと思います。


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【Hさん】

 私は、なんといってもビアズリー推しで。100年くらい前に出版された、オスカー・ワイルド『サロメ』の現物を持ってきました。やっぱり本はガラスケースの中じゃなくて、手に取れないと。

 「垂直」(19頁)が強いです。服の襞のラインも横の要素がなく、シルエットも縦に長く見えます。血がしたたり落ちる「垂直」も印象的です。



 《プラトニックな歎き》では、「垂直」とともに、「水平」も効果的に用いられています。人体の「水平」は、死を感じさせると書かれていますが(34頁)、この絵にはまさに、死が強く漂っています。


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 読書会の後は、皆で大阪浮世絵美術館「二人の天才 -葛飾北斎・月岡芳年-」展に行きました。心斎橋のど真ん中にあるコンパクトな美術館です。しかし、構図の本を読んだ後に北斎・芳年を観に行くっていうのは、大正解でした。

 いまさらかもしれませんが、北斎の構図、絶妙ですね。《甲州石班沢》の、富士山の稜線と漁師の投網が共鳴するような構図の素晴らしさ。
 分かりやすいといえば分かりやすいですが、『構図がわかれば絵画がわかる』を読んだからこそ、北斎の構図の妙を、より強烈に感じたのですよ! きっと!


 さらにそのあと喫茶店に行って、シフォンケーキを食べながら、絵画談義をするという…。

 とても面白かった! えもいわれぬくらいの、読書会的満足を得たのでした。

 ではまた。


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2023年12月9日土曜日

第37回読書会 ビブリオバトル・テーマ「推せる楽しみの新書」


今回のテーマは、「推せる楽しみの新書」。自分の(読書以外の)楽しみを、皆に紹介してあわよくば広げようという試みです。

 結果、予想を超えて多様な新書が集まりました!

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【1冊目】

『恐怖の正体 トラウマ・恐怖症からホラーまで』(春日武彦、中公新書)

 私は子どものころから、怖い話と聞くと読みたくなるんですが、それがなぜだろうと思って読んでみました。

 でも実は、恐怖は定義しにくいというんです。
 例えば、テントウムシが1匹いるとかわいいだけですが、テントウムシが沢山いると怖くなる。集合体恐怖っていうらしいんですが、それがなぜなのか、きちんと解明されているわけではない。
 それでもこの本は、恐怖をいわば腑分けして、正体を探ってくれます。ですので、自分にとっての恐怖の本質を考えることもできると思います。

 あと、怖い本の紹介としてもおすすめです。

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【2冊目】

『藤井聡太論 将棋の未来』(谷川浩司、講談社+α新書)

 将棋のタイトルを狙う上位棋士は、一年を通じて、挑戦権を得るための選抜マッチを行っているようなものです。名人戦では、挑戦権を得るまででも、何年もかかる。
 ですので、それを八冠(羽生時代では七冠)とるというのが、いかに凄いことか。この本には、名人の系譜も書かれています。

 これを中学生棋士の先輩、当時の最年少記録を次々に塗り替えた、谷川さんが書いたというのが、とてもいいですね。

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【3冊目】

『大学で学ぶゾンビ学 人はなぜゾンビに惹かれるのか』(岡本健、扶桑社新書)を読んだ。

 私はゾンビものを推します。ゾンビはなぜこんなにも魅力的か。それは、極限状態のシミュレーションという面が大きいんじゃないでしょうか。皆がゾンビになっていく状況、パンデミックになったら、いったいどうなってしまうのかという。

 そういう状況では、今回のコロナ禍がまさにそうでしたが、社会によって対応に違いが出る。つまり、ゾンビを考えることは、社会を考えることになるんですね。

 あとは、ゾンビのようなエンターテイメントを、ただ楽しむだけではなくて、研究する方法を、卒論の書き方のように教えてくれるというのもこの本のいいところです。どんな趣味でも、それを究めるための参考になるという意味でもおすすめです。

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【4冊目】

『科学の横道 サイエンス・マインドを探る12の対話』(佐倉統、中公新書)を読んだ。

 私は理系なんですが、全くオタク気質でないというか、あまりのめり込まないところがあります。自分のやっている研究についてだけ延々と嬉々として話すっていうタイプの人、いますよね。私はそういうことはなくて、そのことにコンプレックスを感じたこともありました。

 この本は、それでもよい、と言ってくれた本です。著者と多様な職種の人との対談集なんですが、とても楽しくて、科学の捉え方にも色々あるんだと教えてくれました。科学の美しさとか、科学と文学とか、科学と介護とか。

 イギリスでは一般の人でも気軽に科学館に行くような、穏やかなサイエンス・マインドがあるようで、そういうのはとてもいいなと思いました。

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【5冊目】

『仏像図解新書』(石井亜矢子、小学館101新書)

 私は仏像を推します。仏像について知りたいなら、この本がおすすめです。

 例えば、その仏像がどのくらい尊いものなのか、仏像だけから分かります。尊いほうから、如来・菩薩・明王・天部なんですが、例えば螺髪(らほつ)、パンチパーマみたいなやつですね、それがあるのは如来だけ。だから大仏は、大きいだけじゃなくて、如来だから尊いんです。

 不動明王はあんなに怖い顔をしておられますが、じつは大日如来の化身なので、慈悲深いんです。不動明王に化身するのは、怒られたほうが煩悩から立ち直りやすいタイプの人を救うためなんですね。

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【6冊目】

『続セルフ・コントロール』(池見酉次郎ほか、創元新書)

 人間関係に悩むことがありまして、そういうときの私の推しは、交流分析です。

 まさに人間の交流を分析するんですが、特に、人間関係のゲームの類型を教えてくれるところがお勧めポイントです。
 例えば、「イエス・バットゲーム」というのは、相手に「そうだけど、でも…」と必ず返すというもので、これは相手の時間を奪ってやりたいというか、かまってもらえなかったことから来るゲームなんですね。実は私自身が「イエス・バットゲーム」をやってしまいがちで、ああ、私は「イエス・バットゲーム」をやってるな、と気づけたことがあります。

 他には、迷惑系YouTuberみたいな「キック・ミーゲーム」とか。このゲームを仕掛けてくる人には、注目そのものが報酬として働きますので、無視の一択ですよ。

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【7冊目】

『構図がわかれば絵画がわかる』(布施英利、光文社新書)

 絵そのものの印象、作者や文化史を知らなくても感じる、ファーストインプレッションは、どこから来るんでしょうか。それはやっぱり構図でしょう。

 この本は、点から始まって、垂直線、水平線、三角形、遠近法、色といった構図から、絵の魅力を語ってくれます。

 例えば、ダ・ヴィンチ《聖アンナと聖母子》と、ピカソのキュビズムの名作《アビニョンの娘たち》は、技法も思想も時代も、ぜんぜん違う絵ですが、構図には共通点があります。なにもかも違うように見えるこの2つの絵には、共通のものがあるのです。

 我々は、ただ絵を見ているだけでも無意識に構図を感じているのですが、それを知った上で見ると、また新たな絵の魅力に気づくと思います。

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 以上7冊、ホラー、将棋、ゾンビ、科学文化、仏像、交流分析、絵画ときた!
 仏像まで! 多様すぎる!

 もうどれがチャンプ本となるのか全然わかりませんが、投票の結果、ゾンビ・科学文化・絵画の決選投票となり…。

 チャンプ本は
『構図がわかれば絵画がわかる』(布施英利、光文社新書)
となりました! おめでとうございます。

 そこで来月の読書会は、チャンプ本を課題本にした、「構図がわかれば浮世絵がわかる」(読書会&美術館)です!

 新書を読んで構図がわかったうえで、皆で美術館に行ってみよう! という。我ながら楽しみなイベントでございます。新書は皆で読めるからいいですよね。

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 料理の写真は豚バラ肉のタマネギスープがけ。今回は初参加者もいらして、とても嬉しかったです。ではまた。


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2023年11月30日木曜日

第36回読書会 『過剰可視化社会』


『過剰可視化社会』(與那覇順)、読書会レポートです。この本は論争的で、対談部分も噛み合っていて、読書会も盛り上がりました。

 以下、参加者から出た意見です。

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【Aさん】

 「一度でも『ネガティブな衝突は起きてはいけない』という未然防止的な優しさが煮詰まった現在」(77ページ)というところ、とても共感できた。決して人と衝突してはいけない、というのは違うと思う。

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【Bさん】

 表現が攻撃的で合わない。また、過剰だと判断する基準が示されないため、著者の気分で過剰だと決めてるように思えてしまう。

 著者は「マイノリティを『キラキラさせる』ことでPRする社会運動の限界」を指摘している(75ページ)けど、あまり賛成できない。
 例えば、「車いすでもあきらめない世界をつくる WheeLog! みんなでつくるバリアフリーマップ」(https://wheelog.com/hp/)という活動があるが、著者ならこれもキラキラ過剰というかもしれない。でも私は良い活動だと思うし、このように車いすユーザーが「可視化」されることは、世界を良くすると思う。

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【Cさん】

 可視化というよりもデジタイズの問題点だと思った。

 人をキャラ付け、プロフィールにタグ付けするリスクが指摘されている(72-74ページ)。ただ、人格などの曖昧なものに名前をつける、範囲を限定すると、処理しやすくなる、つまり楽になる側面がある。どんなデジタイズでもそうだが、功罪の両側面があると思う。

 人のキャラ付けの部分を読んでいると、かなり昔に読んだ実存主義を思い出した。人には、ラベルがつけられる前にも、「実存」があるという。

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【Dさん】

 私もデジタイズの問題だと思った。そして、デジタイズの対極にあるのが身体性だと捉えることができる。
 例えば、こうやって対面で話しているなら、うっかり間違ったことを言ってもすぐに分かってもらえるが、デジタイズされた世界では、ローコンテクストというか、文脈が無視されて、誤解されたままとなってしまう。デジタイズがいくら進んでも、身体性は軽視できないと思う。

 ただ、著者は歴史学者への絶望を強調したりしているが、むしろ人文学への期待が、それこそ「過剰」ではないか。

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【Eさん】

 私は、カテゴリー化の部分が最も面白かった。特に、著者と対談相手の東畑さんの間で、議論が噛み合うところが。
 著者がカテゴリー化の危険を強調するのに対し、東畑さんが、臨床からみたカテゴリー化の効用を指摘する。議論の結論としては、カテゴリーへの当てはめは、治療のきっかけなどの「スタート」となりうるところは有用だが、カテゴリーへの当てはめが「ゴール」となってしまうと、個人としての人生や苦悩が無視されてしまうという。

 これは、私の仕事では、交通事故訴訟のような高度にカテゴリー化された事件を扱うときに感じていたことを、言いあててくれているように思った。

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【Fさん】

 仕事でHR(Human Resources)のデジタル化、人材情報の可視化を行っているが、これでいいのかと思うこともあった。

 人をキャラ付け、タグ付けすることによって、一部の情報だけでその人を判断してしまうようになるリスクが指摘されている(72ページ以下、76-77ページなど)が、納得できる。
 人材情報の可視化は、突然の退職の防止や、生産性の上昇には資するはずだが、その人のことを深く考えなくなるという危険がある。

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【Gさん】

 メディアを鵜呑みにするべきではないというところ、重要だと思う。

 コロナ禍で、メディアに登場する専門家は人流抑制を強調したが、それは無批判に受け入れられるべきではなかったという批判(43ページ)、共感できる。
 私が当時、特にえげつないなと思ったのは、パチンコ店や風俗店へのバッシング。パチンコ店にも風俗店にも思い入れはないが、叩けるから叩いているように見えた。しかもいわゆるリベラルなグループでさえ、それぞれの人の自由よりも、社会的な正しさを重視していた。すごく違和感がある。

→Dさん
 リベラルには2種類あるのではないか。個人の自由を重視するタイプと、最低限の権利確保を重視するタイプの2つが。高齢者がコロナで死亡しやすいことから、後者の意味でのリベラルが目立ったのではないか。
 しかしアガンベン曰く、動物としての生存を重視すると、人間としての生存が抑圧されてしまう。このあたりについては、『私たちはどこにいるのか? 政治としてのエピデミック』(ジョルジョ・アガンベン)がとても面白かった。

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【Hさん】

 私はこの本は共感できるところが多かった。特に、「何が不要不急かを、勝手に決められたくない」というのが、強くそう思う。

 キラキラしている人を決めて称賛することで社会を操るというのは、スターリンの技法だ(51ページ)、というのは非常に面白い。
 最近思うのは、メディアに出てくる高齢者が、むやみに元気だ。これは人生の最後の最後まで元気で生産しろという、現代日本のスターリズムではないか。

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 メディアに出てくるキラキラ高齢者は、現代日本のスターリズム! パワーワードですね。(本に出てくる言葉ではなくて、参加者によるパワーワードです。)この先、メディアにキラキラ高齢者が出てくるたびに、思い出してしまいそう。

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 写真はレモン風味のグリルチキン。今回は焼き色は良い感じですが、味にムラがある…。チキン一つ焼くのも難しいですね。

 ではまた!


 (月1回土曜午前に読書会を開催しています。詳しくはココをクリック!)

2023年11月3日金曜日

濫読弁護士ノンフィクション相談室


 先日、「濫読弁護士ノンフィクション相談室」を、岸和田市立図書館で開催しました!

 私が、リクエストに応じてノンフィクションを薦めまくるという特殊イベントです。6名の方の相談に応じました。

 テンションが上がりますね! 私の。

 相談者の皆様には楽しんでいただけたか分かりませんが、もしお役に立てたなら嬉しいです。

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寄せられた相談は、
 「漂流記のノンフィクション」
 「金沢旅行についての本」
などなど。

 お勧めした本のリストは次のとおりです。

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【漂流記】
https://www.one-tab.com/page/hzvPeWnMSvmppcuE08CdWQ
(私のプロフィールのリンクからとべます)

 漂流記好きの方はぜひどうぞ!
(後半には漂流そのものではない、海に関わる冒険ものも)

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【金沢】
https://www.one-tab.com/page/T2c1rq_3R7ivWjMGcTQWYw
(私のプロフィールのリンクからとべます)

 金沢旅行のお伴にぜひどうぞ!

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 私が本を選ぶ原則は、「面白い本を書く著者が勧める本もまた面白い」というものです。面白い本から面白い本への連鎖を、ここ25年ほど、延々と続けてきました。

 ですので、私が紹介する本は、書評があり、かつ、その書評者の著書にも誰かからの書評がある、という条件を満たすものばかり。

 つまり、
本A ← 書評者甲 ← 甲の著書B ← だれか別の書評者乙
の2連鎖が確保されているものばかりなのです!

 この条件に該当する本を、私が自分で工夫したブックマークレット(JavaScriptプログラム)を使うと、次々に検索できるんです!!

 ビックリマークを沢山つけてみました!!!

 私が言わないと誰も言ってくれないので自分で言いますが、これは凄いことですよ!!!!

 はい。

 私からは以上です。